小松原庸子スペイン舞踊団40周年記念公演
「カルメン」「ドゥエンデ・デル・フラメンコ」終了報告
このたびの記念公演には、大変多くのお客様にご来場頂き、また温かいご声援を下さいましたこと、誠にありがとうございました。
この公演では、今まで私自身が大切に、大切に、演じて参りました大役を、若い舞踊手達に委ねました。彼女達は、期待に応え、連日の厳しい稽古にも耐え、立派に演じてくれました。お陰さまで、多くの批評家の方々やお客様からも大変ご好評を頂き、ほっと致しましたと同時に、大変嬉しく存じました。
この「40周年」という記念の年を機に、更に優れた作品の創造を目指し、舞踊団の今後の、ひいては日本のスペイン舞踊の発展につなげていきたいと念じております
どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます。
小松原 庸子
Photo by KATZ
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読売新聞 2009年1月20日(火曜日)夕刊評:
「ドゥエンデ・デル・フラメンコ」「カルメン」創立40年 理想の「完成形」
情熱的で繊細な美。日本人にしか出来ないフラメンコを追究してきた小松原庸子が、舞踊団の創立40年を記念して演出・振り付けした代表作二つを上演した。
「ドゥエンデ・デル・フラメンコ」は、劇詩人ガルシア・ロルカが“フラメンコの故郷”アンダルシアの人々と情景をうたった7編の舞踊版だ。その一つが「カフェ・カンタンテ」。
踊り子(青木愛子)が恋人を亡くして物思いに沈んでいる。毅然と踊ろうとしても、鏡に男の影が見え隠れする度に心が揺れる。舞台上には陰影に富んだ照明がともり、緑の紗幕を神秘的に輝かせる。その前で、青木は身体の隅々まで思いをみなぎらせて舞い、永遠の別れ、絶ちがたい愛の悲しみをはき出した。
「シギリージャの通過と舞い」では、肌の浅黒い娘(今井麻未)が、女装した男が演じる白い蛇(クリスティアン・ペレス)、黒い蝶(田村陽子)、ジプシー娘たちと、妖しげに、華やかに代わる代わる踊る。みなぎる生命力と裏腹の死が浮かび上がった。
小松原がアンダルシアの大河を踊った「三つの河のバラード」=写真=など他の5編も構成は劇的で、衣裳や装置の彩りが鮮やか。絵画的な美しさに息を呑んだ。日舞を思わせるしなやかな踊り、隅々まで神経が行き届いた舞台は、彼女が独自に作り続けたものだ。
人気作「カルメン」では団員が高い力量を発揮した。ホセ、エスカミーリョ、ガルシア役は、マルコ・バルガス、エル・フンコ、ラファエル・デ・カルメンと一流ぞろい。対するカルメン役の谷淑江は情熱的に、華麗に、粋にと相手ごとにタイプを変えて躍動し、男を翻弄する「運命の女」役を説得力をもって演じきった。
3時間近い公演だが、緊張は途切れない。描き続けた理想の「完成形」を感じさせる舞台だった。
祐成 秀樹
9日、池袋・東京芸術劇場。
(撮影・KATZ)
この評は、読売新聞社と祐成秀樹氏の了解のもとに、転載しております。
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