この度の私とスペイン50年の記念公演に際しましては、皆様から温かいご支援およびご後援を賜りまして、誠にありがとうございました。お陰様で、観客の皆様、批評家の方々からも、大変ご好評を頂き、無事、成功裡に終了することが出来ました事、心より嬉しく存じます。これを機に、更に精進を重ね、今後も皆様のご期待に沿う、より良い舞台を創作し続けて参りたいと思って居ります。今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。
平成25年3月吉日
小松原 庸子
Photo by 大森有起
フラメンコの小松原庸子がスペイン初留学50周年を記念して、自身の生き方を舞台に刻印した公演だ。
1部は、ロルカ原作の舞踊劇「血の婚礼」。結婚式から逃亡した花嫁と元恋人レオナルドを巡る愛憎劇を、演出も手掛ける小松原は、情熱の踊り、陰影に富む照明や舞台美術、多彩な楽曲を組み合わせて描いた。踊り手の感情が高ぶると巧みに「間」を取り、レオナルドを見送る妻、逢瀬を遮られた花嫁の表情など、様々な情景を印象付ける。自身は人々を支配する「運命」役で出演し、貫録たっぷりに黒いマントを振った。
2部はスターの競演。アントニオ・カナーレスが雄大に、フアン・オガジャが熱く、クリージョ・デ・ボルムホスが粋にと個性を見せつけると、小松原が師事した巨匠マノロ・マリンが登場する。ずんぐりした体と長い腕で重厚なポーズを決め、空気を引き締めた。
3部はラベル作曲「ボレロ」=写真=。東日本大震災の犠牲者を追悼するためにカナーレスと共に舞踊化した。静かに高揚するリズムに乗り、倒れた男女が次々と立ち上がって足を踏み、腕を回すうちに約20人の群舞を作る。彼らは腰を落としたり、輪を作ったりと縦横に隊形を変える。躍動する姿を青や緑の光の渦が包むと、荒れ狂う海にも、苦境から立ち上がる人々の姿にも見えた。最後は民謡歌手の小湊美和が子守唄を歌う中、裾の長い衣装の女性たちが穏やかに舞い、再生の祈りを込める。
小松原は公演を通して、本場の名手とフラメンコの芸術性を高めたという功績を印象づけ、同時に、今を生きる創造者の心意気も見せた。まだまだ走り続ける81歳だ。
-5日、初台・新国立劇場。
*写真:瀬戸秀美
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