小松原率いる「小松原庸子スペイン舞踊団」は、30数年にわたって国内外で数多くの公演を行い、日本におけるフラメンコの発展のために果たしてきた功績ははかりしれません。1984年には、国外のスペイン舞踊団として初めてスペインに招かれて公演を行うことになり、スペインの生んだ天才画家ゴヤの作品をテーマとした創作「ゴヤ―光と影」を携えて、セヴィリャ、バルセロナ、マドリッドを訪れました。
「このときの公演は、外国の舞踊団の公演ということ、スペインでもまだ創作フラメンコが珍しかったことであちこちから注目され、これまで自分がやってきたことがスペインで受け入れられるのかどうか、今までの公演で最もプレッシャーを感じました。この舞台が成功したことで『スペイン舞踊をやっていてよかった』と、心の底から実感できましたね」
これ以降も、スペイン公演はことごとく成功を収め、1989年にはアンダルシア文化協会より、スペイン文化を深く理解し、貢献した芸術家に贈られる「ジェラルド・ブレナン賞」を受賞。国内では1983年の芸術祭舞踊部門大賞受賞をはじめ数々の賞を受賞し、1996年には紫綬褒章を授与されました。
「日本で異文化の踊りをしていたのに、日本の政府にそれを認めてもらえたことがとてもうれしかったですね。でも、『芸で生きる』ということの本質において、フラメンコもバレエも邦楽も何ら変わりはないと思います。フラメンコを通じて、自分の積み重ねてきたことを、自分にしか出せない踊りで伝えていく。それをいつまでも大切にしていきたいですね」
幼いときから三味線の音を聞いて育ち、体に「芸人の血」が流れていることを誇りに思って芸を磨き続けてきた小松原。生きることの喜びと楽しさをダイレクトに伝えてくれるフラメンコは、これからも小松原を魅了してやまないことでしょう。
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