|
スペイン舞踊の粋、スペイン男の伊達 「アントニオ・マルケス」 |
アントニオ・マルケスほど姿のいい踊り手はいない。姿勢の美しさはいうまでもないが、頭のてっぺんからつま先まで、全てが完璧なハーモニーをもった美しさである。スペイン舞踊の粋、という言葉は彼のためにあるのか、と思えるほどだ。
スペインの舞踊というとフラメンコばかりが注目されがちだが、地方ごとの多彩で豊かな文化を誇るスペインには、フラメンコ以外にも魅力的な各地の舞踊がある。アントニオ・マルケス はその全てに秀でた、素晴らしいスペイン舞踊家である。
スペイン国立バレエ団のスターとして「メデア」などの名作に主演していた彼を覚えている人は日本でも多いことだろう。その後自らの 舞踊団を結成し、ヨーロッパを中心に世界各地で活躍している。観客を魅了する天性のカリスマとでもいうべきものが彼にはある。デテールにまで気をつかった身のこなし。そしてそのまなざしの色気。歌舞伎役者の見栄に通じるその男ぶりの良さ。スペイン男の伊達を、あざやかにみせてくれる。
真夏の夜、日比谷にアントニオ・マルケスがやってくる。スペインの粋を心いくまで堪能してほしい。
舞踊ジャーナリスト
志風 恭子
|