2002年9月21日
セヴィリャ・マエストランサ劇場の観客は総立ちとなり拍手は 鳴り止まなかった――
“トマティート・コンサート”
私は暫しその場所を立ち去れなかった
初めてトマティートを日本に招いたのは今から10年前
多くの観客を魅了した若さ溢れるコンサートだった―が―
10年の歳月は、彼を偉大な芸術家に変えた
繊細・優雅・情熱、そしてたぐい稀なフラメンコの感性
強烈なリズム
テクニックを超えるテクニック
そこには‘フラメンコのドゥエンデ’があった
多くの日本の人々にトマティートを
このコンサートを聞かせたい!!!
小松原庸子 |
NHKハイビジョン取材時の小松原&トマティート |
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トマティートが日本にやってくる! |
スペインを代表するフラメンコ・ギタリスト、トマティート。 世界に名高いギタリスト、パコ・デ・ルシアの後をうけ、早世した天才フラメンコ歌手カマロンの伴奏ギタリストとして10代の頃から活躍をはじめた彼。
92年、カマロンが亡くなった後はソリストとして世界を舞台に活躍している。最近ではジャズ・ピアニスト、ミシェル・カミロと共演したアルバム「スペイン」と故カマロンのライブ・アルバム「パリ1987」(ともにユニバーサル社)で第一回ラテングラミー賞をダブル受賞したことが記憶に新しい。
これまでに、小松原庸子が主催したフラメンコ・フェスティバルのゲストとして、又ミシェル・カミロとのセッションでの来日を果たしているが、今回は初めて、自らのグループを率いての初公演であり、期待は高まるばかりだ。
スペインでも抜群の人気を誇る彼の舞台はヒターノ(ロマ)らしい荒々しい野生の輝きと力強さにあふれ、フラメンコの熱をダイレクトに伝えてくれる。歌い手、踊り手、ベース、パーカッションといったバックミュージシャンたちもヒターノの実力者ばかり。日本でも熱い舞台を繰り広げてくれることだろう。が、お楽しみはそればかりではない。
2002年9月21日、セビリアで開催された世界最大のフラメンコ・フェスティバル、ビエナルで初演されたピアソラの曲をもきかせてくれるというのだ。タンゴの巨匠、アストル・ピアソラはヨーヨーマやデュオ・アサドなどクラシックの演奏家たちにも何度も取り上げられているが、トマティートは「アディオス・ノニノ」などの名曲をクラシック系のギタリスト、カルラス・トレパルとの競演でみごとに聴かせてくれた。これを一枚のアルバムにまとめる企画もあるというが、それにさきがけた日本での公演となりそうだ。
志風恭子
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日本人ギタリストからの期待と賞賛 |
何時もタイミングが合わず、未だに彼の演奏会に出会えない。
フラメンコは勿論だが、今度のコンサートではピアソラも聞けるそうだ。
トマティートの卓越したギターがどんな演奏になるのか楽しみにしている。
荘 村 清 志(クラシックギタリスト)
トマティートは周りの音楽をねじ伏せることなく、それらと融合しながら、優
雅にモダンに彼自身のフラメンコを語る。その精神は、彼がカマロンから学んだ大いなる遺産だろう。
渡辺香津美(ギタリスト)
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観衆はピアソラの初演でトマティートの挑戦を賞賛 |
エル・パイス紙 EL PAIS
2002年9月23日
ギタリストはセヴィリャのビエナル・デ・フラメンコで2部構成のプログラムを披露
トマティートには今回の挑戦に対して恐れは無い。五線符を知らないという彼のピアソラを再現しようという熱望に歯止めをかけることなどはなかった。20世紀アルゼンチンの最も優秀なミュージシャンの音が彼によるギターの中で響く。なぜなら、彼は心の中で一度再現しているからだ。去る土曜日に「ピアソラに捧げる」を初演したセヴィリャのマエストランサ劇場の観衆は10月6日まで開催されるビエナル・デ・フラメンコで総立ちとなった。
ホセ・フェルナンデス・トーレス“トマティート”はアストール・ピアソラ(1921-1992)の音楽をもってフラメンコ界に新たな試みを行うことが本当の挑戦であるということをはっきりと自覚している。彼に常についてまわるカマロンとの18年間という“恩給”で生活したくない、この44歳のギタリストの努力に観衆は熱烈に応えた。
真似ることを敬遠する純粋主義者達はビエナルが回を重ねるごとに激化している、異端派か正統派かという永遠の論争を、唯一古きものを理解している者のみが革新することができるという結論付けをしつつ、解決している。「トマティートに対しては、何の判断もない。なぜなら、彼が持って生まれたものにこれ以上忠実になることはできないからだ。彼が演奏するものはすべてフラメンコだし、今日も“アイレ・デ・タンゴ”あるいは“フーガ・イ・ミステリオ”でそれを証明してくれた。」とある愛好家はコメントした。もう一人、彼の音楽のファンであるギタリスト、ライムンド・アマドールは以下のように語り、コンサート会場から満足気に出てきた。「トマテが演奏するものはすべてフラメンコとなるのだ」
トマティートがピアソラの楽譜を暗記するために共に仕事をしたCarles Trepatのクラシックギターとベルナルド・パリージャのバイオリンがコンサートの第1部で彼に伴奏した。最初にフラメンコが来て、その後トマティートはポティートの歌、ディエゴ・アマドールのマンドーラ、ラモン・ポリーナとベルナルド・パリージャのパーカッションに囲まれた。批評家によると名手のベルナルド・パリージャは彼の弦でホンドの音を奏でる、最高のフラメンコバイオリニストとされる。
コンサートは、観衆にとってはあっという間に感じられたが、1時間半続き、ルンバ「ヴァシオラ」で終わり、ホセリート・フェルナンデスの踊りも見られた。照明家Sergio Spinelliによって配置された月はカメレオンのようにトマティートのギターが織り成す様々な色で染められた。
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伝説と幻想との間で |
エル・ムンド紙 EL MUNDO
2002年3月12日
トマティートは彼を取り囲む炎を通じて、彼の才能で他の音楽のリズムを吸収することができる唯一のアーティストである。そして彼は今、自分自身が燃えつきることなく、むしろ最も適した領域にそれを持ち込み、彼のアイデンティティを失うことも、彼の理念に何ら干渉することもなく、それをやってのけた。
このアルバムの中で全ての音楽的な借りは、彼のギターを前にしてその意味を失う。異なったリズムを熱くして焦がし、生気を与え、陽気な音に変える彼のギターは、互いの音を殺しあうことなく、いかにして同時に魔法がかった神秘的なことを成し得るのか、不確定な自由さを以って、思う存分に輝き、陶然とさせるような我々が“芸術”というところの美の理想的な形を形成する。
さらに最も興味深い点はこの作品が練磨の課程を展開しているということである。その中で、フラメンコは優位な地位に位置しているが、根本的ではなく、伝統的精神という形においても開放し、他の音楽に対して、鋭敏な彼の性質のおかげで、不思議な結合に達したのである。
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